猛獣チワワと愚鈍な魔女

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  「“Raison d'etre”の TAKUMIくんだって、 もう30でしょ!」 「あっちは男。お前は女。 脂の乗る時期が違う」 「きいい、腹立つ! 九鬼さん、ムカツク! 男尊女卑とか死んじゃえ!」 「男尊女卑とか、 大袈裟な。 大丈夫、 和泉朱里の喉は まだまだ現役だし旬だ」 びっくりするほど 短気な朱里さんに 呆然とするものの、 お兄ちゃんはやっぱり動じない。 「そのつもりだけど…… うう、ああ、 なんか大人になればなるほど 腹が立つことって 増えてく気がする。 年齢のこととか 年齢のこととか 年齢のこととか」 それは大いに 朱里さんに 賛同したいところだった。 両手で顔を覆って うめく歌姫を、 なんとなく直視しては いけない気がしてしまう。 呼吸をひそめていると、 しばらく黙って きれいなうめき声を 聞いていたお兄ちゃんが ふと口を開く。 .
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