猛獣チワワと愚鈍な魔女

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  ゚・*:.。..。.:*・゚・*:.。..。.:*・゚ 「ソール化粧品の仕事を お前が取れたら、 そうするつもりでいたんだ」 朱里さんを 次の仕事場である スタジオに送り届けたあと、 お兄ちゃんは車を出しながら そう言った。 しょんぼりする歌姫は まだなにか言いたげな 顔をしてはいたけど、 あたしと目が合うなり にっこり笑って 「またね」と 手を振ってくれた。 その感じで、 朱里さんは お兄ちゃんの気持ちを 少しは判っている 気がした。 たぶん、 朱里さんの マネージャーを 辞めた理由も。 判っていて お兄ちゃんに戻って欲しい、 というのは残酷な話だ。 でも、それでも お兄ちゃんの助けが 欲しい時が あるのだろうと── 一瞬でも第一線にいた あたしには想像ができた。 普通に働いていても きっとそうだろうけど、 芸能界で女が 仕事をしていくのは きついものがある。 スタッフさんにも 女性は多いけれど、 やっぱり基本的には 男社会なんだと思う。 働く女の人の頭の中が どんどん男の人の それになっていくのが いい証拠だ。 .
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