愚鈍な魔女と無礼紳士

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  半ば痛みを伴う その抽挿は、 逆にあたしを高めてくる。 「けーたこそ、 勘違い、して、るッ」 「なに、が」 ──そんなふうに 思ってもらえるような 女じゃない。 20代の半ばを 過ぎるまで 恋のひとつも してこなかった。 そのせいで面白みも 色気もなくて、 仕事を失っていった。 努力しているつもりで、 素知らぬ顔で周囲に 嫉妬ばかりして。 ……あたしはそんな つまらない女だ。 息も絶え絶えに そう訴えると、 蛍太はひとつ 盛大な溜め息をつく。 「そういうところが 一番可愛いんだって。 ……判ってないな」 それを言う間だけ 動きを止め、 蛍太は優しく微笑んだ。 そのついでのように 頭を撫でられて、 自分が小さな子どもに 還ってしまったような 気持ちになる。 ちゅ、と 覆いかぶさるような キスをされて、 完全にここにしか 居場所がないと思った。 これが本当に 勘違いだったら、 恋とか愛とか 一気に色褪せてしまう 気がするんだけど。 蛍太に必死に 欲しがられる感じは、 決して悪くない。 .
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