愚鈍な魔女と無礼紳士

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  ゚・*:.。..。.:*・゚・*:.。..。.:*・゚ それから、 夏が加速度を つけていくごとに、 あたしの周囲も 信じられないくらい 慌ただしくなっていった。 一度経験して 判ったつもりに なっていたけど、 大きなCMの仕事には 細かい仕事が これでもかとついて回る。 ソール化粧品さんの 主催ではないけれど、 スポンサーだったり 協力関係にある 会社が携わる 小さなイベントや テレビ出演。 そのいちいちに ちゃんとギャラ設定は あると聞いてはいるけど、 そもそも20代に 入ってからは 普通の会社勤めの方が 長かったから、 細かい内訳は 自分じゃ全然判らない。 お兄ちゃんに 任せておけば 大丈夫だろうなんて、 他人のことだったら 「大丈夫?」と 訊きたくなってしまう。 それほどあたし自身、 いっぱいいっぱいって ことなんだけど。 お兄ちゃんが あたしについてくれると 決めたのも頷ける。 本格的な ソール化粧品さんとの 打ち合わせは、 お盆を過ぎてからだった。 「今日の午前中、 郊外を回ってくることが あったんですが。 もうトンボが飛んでました」 挨拶を交わしてから テーブルに着いた途端、 松崎さんが溜め息をつく。 .
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