愚鈍な魔女と無礼紳士

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  「あ、あの。 松崎さん」 「はいはい?」 あたしに合わせて 立ち上がってくれた 松崎さんの対応に慌てて、 バッグをかき回す。 「先日は、 どうもありがとう ございました! 遅くなって 申し訳ありません」 バッグの中から 取り出したのは、 前に松崎さんに渡された オリオン・ブルーの シルクのハンカチ。 ……と、 新しく買った 同じメーカーの 違うハンカチ。 洗ってお返しするだけでは 失礼かと思って、 用意していたものだ。 松崎さんは一瞬 なんのことか判らなかったらしく きょとんとしていたけど、 オリオン・ブルーの ハンカチの方を見て ああと頷く。 「え? あ、いいのに、そんな」 「いえ、 大きなチャンスに 助け船を出して くださったのに、 小さなお礼で 申し訳ないんですが……」 「いやいや、 あの時は自分も 大変失礼なことを 言いました。 オーディションを 受けに来てくださっている モデルさん相手に、 私見を押し付けるような」 .
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