愚鈍な魔女と無礼紳士

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  話して欲しかったと 言外で訴えると、 蛍太は「あっ」という 顔をした。 「ごめん。 でも、よけいな心配 かけたくなくて…… 莉々、あのCMの話 来てた頃だったし」 「あ」 ……あの頃だと聞いて、 完全に気持ちが “納得”に転がった。 蛍太自身の周囲も 慌ただしかった。 アイドルをやめて 事務所を変わるとか、 ロックアーティスト 目指すんだとか、 いっぱいあったし。 蛍太はまだ 半分くらい残っている煙草を 灰皿の中で消してしまうと、 あたしに向き直って ぎゅっと抱きついてくる。 「恥ずかしいハナシ、 あの人とちゃんと 切れたの…… 九鬼さんとか拓海とか 凌士の助け、 あったから……」 「そうなの?」 「そう…… だからこの間みたいに あの人との共演 避けられないとかだと…… 拓海が先に出て、 対応してくれる」 「……」 10年経っても、 それって。 「けーた」 「……」 黙って鎖骨のあたりで、 溜め息をつかれた。 .
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