愚鈍な魔女と無礼紳士

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  ……とはいえ、 本気で思い詰めて 執着されても 困るのだけど。 なんとも判断の つかないことを 考えていると、 松崎さんはふと 遠い目になる。 「もう10年近く 前でしたっけ。 莉々さんの、例のCM」 「え? あ、はい……」 思考がまだ とっ散らかったまま 返事をすると、 松崎さんはちょっと 寂しそうに肩を竦めた。 「やっぱり、 覚えてないかなー。 隅っこにいた サラリーマンのことなんて」 「……え?」 「あの撮影現場に、 自分、いたんですよ。 莉々さんと デビュー前のKE-TAさんが ホースで水遊びしてるの、 見てました」 「……!?」 にこにこと微笑む 松崎さんは、 あたしがそれを 覚えていないことなど 口で言うほど 気にしていない様子だ。 .
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