愚鈍な魔女と無礼紳士

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  にこやかだった 彼の笑顔がはたと止まり、 はぁと小さな 溜め息をついた。 「──モデルさんや タレントさん達が、 みんな莉々さんみたいに スタッフまで 鼓舞してくれるような 気持ちのいい方なら、 楽なんですけど」 「……」 愚痴かな。 思った瞬間、 松崎さんはきりっと あたしの顔を見つめ直す。 「莉々さん、 この業界、色んな仕事や 人間がいますけど。 そういう経緯で自分、 莉々さんのこと めちゃくちゃ 応援してますんで。 頑張りましょうね」 ハンカチ ありがとうございました、と 気分を変えるように微笑み、 松崎さんはテーブルの隅に 包装したままのハンカチを そっと置いた。 ここで開けないところが よくわきまえた方だなぁ、 と思う。 「こちらこそ、 ありがとうございます」 .
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