愚鈍な魔女と無礼紳士

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  赤があたしのルート。 強めの街灯が照らす 真っ黒の夜道に 雨が降り出し、 あたしが駆け出す。 恋人役の蛍太が追ってくる。 半泣きでそれを振り切り 車に乗り込んだあたしは、 バッグの中から メイク道具を取り出して 頑張ろうと奮起するもの。 この数日間で 用意されたのかなーと 疑いたくなるくらい、 起用モデルに 当て書きされたような 内容だった。 ──つまり、 メインモデルに 花を添える男性陣 “Raison d'etre”が そのままCMソングも 歌うってことだ。 「俺達が一番働いてねえか」 拓海さんが 眉根を寄せたまま 困ったように笑う。 「そうなりますね」 松崎さんが苦笑で答えた。 「ねえねえ、 俺が赤担当なのは この髪のせいかな」 .
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