愚鈍な魔女と無礼紳士

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  憧れの種をひとつ 見つけたところで、 見る目なら自分もそうそう 捨てたものじゃないはず、 とささやかに 自信のありかを確認した。 一時でも撮影最前線に いたというのは 一番強いはずだ。 ロビーでエレベーターを 待っていると、 さっき席を外していた 松崎さんがネクタイをゆるめ、 だるそうに 外から戻ってきた。 「松崎さん、 おかえりなさい」 志緒さんと一緒に 挨拶すると、 松崎さんはあっと ゆるいネクタイに気付き 「すみません」と苦笑する。 「陽は傾いてきたんですけど、 暑くて仕方ないっすね」 松崎さんはそのまま 一緒にエレベーターに 乗り込み、 志緒さんと あたしを一瞥した。 「莉々さんが そうやって気軽に お買い物とかできるの、 秋まででしょうねえ」 .
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