愚鈍な魔女と無礼紳士

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  すると志緒さんと 松崎さんが揃って あたしをぎっと見据える。 「……あ」 「……」 ふたりとも、 眉をひそめて 立てた人差し指を 口元に当てる仕草をした。 意外とぴったり合った その仕草に、 こんな密室でも いけないんだ、 と気が引き締まる。 「……今回、 誰も確約は なかったんだけどね。 受かるつもりだったらしくて」 彼女の対応をしているという 松崎さんが 溜め息をついた。 そして、 もう片方の手に 持ったままの 携帯をひらひらと 示して見せる。 「今も、そのオデンワ。 ご本人直々にね」 「……おつかれ、さま、 です」 素直な感想として、 思わず松崎さんを労う。 あの口の減らない 彼女が自分の不満を 口にし始めたら どうなるんだろう── なんて想像は あまりできなかった。 .
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