愚鈍な魔女と無礼紳士

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  さっきひどく 汗をかいたはずなのに、 それはそれで さらさらした髪。 蛍太の汗と 整髪料の香りが混じって、 ドキドキする。 思わず顔を寄せて、 こっそり吸い込んでしまう。 落ち着くのと ドキドキと、 一緒に感じる。 これじゃ、 よくあたしの匂いを 嗅ぎに来る蛍太のこと、 批難できない。 「判るじゃん。 他人の、こっからは 入っちゃいけないところとか。 別に地雷を踏みかけて、 顔色変えられなくてもさ」 「……うん」 蛍太の 言いたいことは判る。 「でも、あの女、 違うんだよ。 がんがん踏み込んでくる。 それだけならまだしも、 親密だからこそ したハナシとか、 勝手に人に言う。 アタシはこんな秘密 打ち明けてもらえる 人間なんです、 みたいに」 「……」 「もう、いくら俺でも、 軽いお付き合いでも、 無理だよね。 そーゆーの」 その価値観が 蛍太と一致して、 ほっとしてしまった。 だからこそ、 彼の髪をくしゃくしゃに 撫で回しながら ささやく。 「……けーた、 あの人に言ったの? あたしのこと、好きだって……」 「え?」 「そう、言ってた……」 .
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