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「あんた、
莉々のこと狙ってんな」
「KE-TAさん」
そばに立っていた
池上さんは、
ぴくりとも動かずに
蛍太を呼ぶだけで諌めた。
蛍太はそれに反応して
振り返りはしたものの、
気を取り直し
松崎さんに視線を戻す。
池上さんの言うことを
聞く気は
あるんだろうけど。
「狙っていませんよ」
松崎さんは
思い当たったように
苦く微笑むと、
同じくらいの身長の
蛍太を真正面から
見つめた。
喧嘩を始めそうな
空気ではないけれど、
これは明らかに
他人事じゃない。
「嘘つけよ。
莉々のこと好きなやつ、
俺、すぐ判るよ」
「参りましたね」
聞く耳を持たない
蛍太の肩を、
池上さんが近付いて
ぽんぽんと撫でる。
けれど彼は
それを無言で
振りほどいてしまった。
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