赤と青の戦場

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  あたしの苦手なものの ひとつは、 サイコホラーだ。 ひんやりとした空気が じかに伝わるような ブルートーンの かかった画面で、 血の気のない人達が 喜怒哀楽の喜と楽を 忘れたように 淡々と振る舞い、 知恵比べや 恐怖による支配で 主人公達が追い詰められ、 最後には赤黒い血で 染まっていくような。 あの、“血の気のなさ”が めちゃくちゃ怖い。 日本人の肌は 白人のように 真っ白じゃないから、 見慣れていないっていうのも もちろんあるんだけど。 そのくせ血走った おめめだけが 身体の動作以上に ぎょろぎょろと よく動いて。 ──今の状況が それととても よく似ている気がした。 鏡を覗いてないから 自分の顔は判らないけれど、 疲れをたたえた 松崎さんの顔からは 明らかに 血の気が失せていたから。 .
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