赤と青の真理

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  「おはよう、蛍太」 「うわーん、 顔見るの何週間ぶりかなー。 ハグハグしたい。だめ?」 共演のモデルさんなら 誰にでも言いそうな 軽さをもって 蛍太はあたしの周りを ちょろちょろする。 腰にぶら下げた フォックスファーが 本当に仔犬の尻尾みたいで、 思わず吹き出した。 「せっかく スタイリングしてもらったのに、 だめだよ」 「うえーん、 目の前にナマ莉々が いるのに切ない! 俺はすごく切ないよ!」 軽々しいけれど、 すこぶる本気の 蛍太の言動は 周りには軽く流されて、 みんな笑っている。 あたしだけが判る機微に、 改めて胸が ずくんと疼いた。 「じゃ、手つなご。 せめておてて」 必死に言う蛍太は、 言うが早いか あたしの小指に 自分の小指を絡めてくる。 .
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