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雨の夜道は
CGであとから
はめ込むらしく、
デジタルブルーの
合成幕が張られていて、
床はもうバミられている。
幾度となく見た
撮影風景。
また自分が
この中央に
戻ってくるなんて──
夢見てはいたけれど、
それが現実のことに
なるだなんて、
思いもしなかった。
「行こっか、莉々」
蛍太がそれらしく
あたしの手を取り、
かしずくように
顔を傾けてくれた。
──天下の
“Raison d'etreのKE-TA”が、
あたしを盛り立ててくれる
この現実に、
改めて眩暈がする。
「うん」
蛍太の手を握り返し、
彼に導かれて
デジタルブルーの
スクリーン中央に
足を進めた。
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