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言うが早いか、
蛍太は白瀬さんを連れて
入り口にどどんと
立っていた池上さんに
合図してから
お兄ちゃんを
探し始める。
池上さんも池上さんだ、
よく判ってないはずなのに、
蛍太に乗せられて
一緒にお兄ちゃんを
探す輪に加わり
そのまま
外に出てしまった。
ひとりぽつんと
残されたあたしに、
メイクさんが
「……パウダーもう1回
押さえておきましょうか」と
気遣って来てくれた。
曖昧に頷いて
メイク直しを受けながら、
口唇を尖らせる。
わざわざお兄ちゃんに
許可を取ろうなんて、
確実に蛍太は演出を
いじろうとしているって
ことじゃないか。
現場では
よくあることだけど、
監督さんや
カメラさんでなく、
出演者が言い出すとか
普通じゃない。
のけ者にされた不満で
そこまで考えてから──
はなから蛍太は
普通じゃなかったことを
思い出した。
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