赤と青の真理

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  その瞬間ブーンと 空調がきつくなり、 ミストのような水が 天井から降り注いだ。 最初から 絵コンテにあった、 演出の雨だ。 最終的なカメリハと 思っていたのに、 これは本格的な本番だ。 失敗して撮り直し なんてことになったら、 衣装もメイクも 最初からになってしまう。 一瞬心臓が 凍り付きそうになり、 慌てて自分の発言を 守ることに努めた。 気分は、 紫寄りの赤。 紫寄りの赤。 紫寄りの赤。 呪文のように 心の中で繰り返していると、 「スタート!」と 緊張を裂く 白瀬さんの声が響いた。 反射的に、 さっきまで何度も 繰り返した動きを なぞろうと、 あたしの足は 意識よりも先に 踏み出されていた。 先に出した左足を 追うように、 右足で湿り始めた スクリーンを 蹴り上げて進む。 .
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