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すると、
さっきまでは
隣を並走するように
ついてきた
クレーンカメラが
ぐいんと斜め下に急降下し、
舐め上げてきた。
動揺しないように、
指定された地点まで
走ることに
意識を集中させる。
軽く駆け出す程度の
あたしと違い、
離れたところから
追ってくる蛍太は
全力疾走に近い感じで
走ってきた。
手を掴まれて──
振り返り一瞬睨んだあと、
手を払う。
あたしの動きは
それだけのはず。
彼の息遣いを
すぐ後ろに感じた瞬間、
手首ではなく
二の腕を掴まれた。
え、と思った瞬間、
振り返るより先に
ぐるんと体を
反転させられる。
「──!」
なにが起きたのか
把握する前に、
いつもは好奇心で
ぐりぐりよく動く
蛍太の大きな目が、
あたしを見て
細められていた。
眉根は切なげに
寄せられていて、
どきりとしてしまう。
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