赤と青の真理

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  蛍太、と 思わずささやきかけて しまいそうになった。 すんでのところで その声を 飲み込んだあたしは、 指示のない次の動きを どうしたらよいか判らず そのまま硬直する。 白瀬さんが 止めないということは、 変更になった 演出通りに 蛍太は動いているんだろう。 任せていいのかどうか 迷っていると、 蛍太は苦しげな表情で あたしを抱き寄せ、 頬をするすると 撫でてきた。 ……いつもふたりきりで 見つめ合う時と 寸分違わぬその熱量に、 仕事中だという意識が 強制的に 引っぺがされていく。 いけない、 こんなんじゃ 撮り直しになってしまう──。 思った瞬間、 蛍太の顔が傾く。 「──……!!」 .
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