赤と青の真理

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  「KE-TAさん、 入られました」 ふいにドアの向こうから 聞こえてきた スタッフさんの声に、 びくりと 背筋をしならせた。 彼があたしの楽屋を 覗きに来たわけでもないのに。 オーバーだ。 一瞬でドキドキし始めた 心臓に「落ち着いて」と 心の中で言い聞かせ、 溜め息で クールダウンを促す。 昔から知ってるのに、 何度も何度も 抱かれたのに、 ……これだ。 ただ蛍太の マネージャーとして 付き従い、 彼がよそに行くのを 見送ってた頃も、 こんな生々しい 鼓動は知らなかった。 “女”になるって いうのはすごく 厄介なことだというのが、 夏からこっちの あたしの実感だった。 .
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