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頬を撫でていた
蛍太の手は、
いつもそうしてくれるように
あたしのうなじに
滑っていって──
強く引き寄せられ、
ふわっと口唇を
塞がれていた。
ライトのせいか
キスのせいか、
瞼の裏が
ちかちかしてしまう。
「──ッ、は……!」
なんとか理性を取り戻し、
蛍太を突き飛ばして
彼から離れた。
「なにするの……!」
思わず
素の言葉が
出てしまった。
けれど蛍太は
動揺する様子もなく、
あたしから移った
リップを指先で拭う。
そのわざとらしいまでの
煽情的な動きと表情に、
彼はまだ
仕事中なのだと
気付かされた。
指先のリップを見つめ、
ぺろりと
軽く舐ってから、
蛍太はスチールグレーの瞳を
こちらに向ける。
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