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蛍太は自分のしたい話を
自分の気が済むまでするし、
あたしが話を
変えようものなら
理由を探り始めて、
面倒なことに
なりそうだ。
彼との
そういうやりとりを
別に億劫だとは
思わないけれど、
せっかく
一緒にいるんだから、
言い合いより
仲良くしていたい。
……“仲良く”の
内訳はその時々で
色々だろうけど。
「食べたい」
「え」
やけに真剣な声で言うと、
蛍太はそのまま
あたしの手を引き寄せて、
薬指を本当に
ぱくりと口に
含んでしまった。
「ちょっと、蛍太……」
「ん」
湿った口唇に
含まれた指先は、
輪郭をなぞるように
歯で軽く
何度も挟まれる。
決して傷をつける
気のないその力加減に、
くすくすと
笑いが漏れた。
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