光あるゆえに影あり

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  言葉を止めたあたしに 必死に訴えながら、 蛍太は自分の 指先と指先で いじいじこすり合わせている。 自分の中の怒りが、 ひどくあさっての方向を 向いていて、 子どもじみて くだらないものだという 自覚はあった。 怒るのに正当な理由は、 もっとたくさんある。 公衆の面前で なんてことしてくれるんだとか、 あなたはそんなことばかり 考えてるのかとか。 けど、 すっかり恋で茹だった あたしの胸も頭も、 そうやって自分を守るために 相手を責める── なんてやり方を すっかり煮やして 役に立たなくしてしまっている。 だって、 蛍太にキスされること そのものに抗う理由が どこにもない。 だから今、 こうしてあたしに 必死に言い訳をする 蛍太を見ていることが、 どこか嬉しい。 .
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