第4章

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   けれど、それから新井くんが口を開くことはなく、新井くんの考えていることはわからないままだった。 ……知らない方がいいのかもね。 新井くんの思わせぶりな発言の数々は、いつか笑い話にして飲みの席でぶちまけよう。 「じゃ、話はおしまい。肉じゃが、容器に詰めてくるから少し待ってて」 わざと明るい声を出してキッチンに移動する。 肉じゃがを渡したら、帰ってもらおう。 月曜からは会社の同僚に戻るだけ。 今までだって、特別な関係だったわけじゃないのだ。 そんなに難しく考えることでもないだろう。 紙袋に容器を入れて新井くんに手渡した。 「容器は返さなくていいから」 「でも」 「本当に気にしないで」 玄関で「じゃ、月曜に会社で」と手を振った。 新井くんもそれに応えるように、「食事ありがとうございました」と頭を下げて出て行った。 「随分とあっさりしてたな……」 ドアを閉めた瞬間、呟いていた。 新井くんのことだから、言葉巧みにいろいろ言われるんじゃないかと少し身構えてたけど。 やっぱり、その程度ってことだ。
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