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けれど、それから新井くんが口を開くことはなく、新井くんの考えていることはわからないままだった。
……知らない方がいいのかもね。
新井くんの思わせぶりな発言の数々は、いつか笑い話にして飲みの席でぶちまけよう。
「じゃ、話はおしまい。肉じゃが、容器に詰めてくるから少し待ってて」
わざと明るい声を出してキッチンに移動する。
肉じゃがを渡したら、帰ってもらおう。
月曜からは会社の同僚に戻るだけ。
今までだって、特別な関係だったわけじゃないのだ。
そんなに難しく考えることでもないだろう。
紙袋に容器を入れて新井くんに手渡した。
「容器は返さなくていいから」
「でも」
「本当に気にしないで」
玄関で「じゃ、月曜に会社で」と手を振った。
新井くんもそれに応えるように、「食事ありがとうございました」と頭を下げて出て行った。
「随分とあっさりしてたな……」
ドアを閉めた瞬間、呟いていた。
新井くんのことだから、言葉巧みにいろいろ言われるんじゃないかと少し身構えてたけど。
やっぱり、その程度ってことだ。
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