第1章

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厳かなパイプオルガンの音色と聖歌隊の優雅な歌声を聞きながら、新郎が祭壇の前で新婦を待っている。 目の前には真紅のヴァージンロード。 差し込む日差しは、ステンドグラスに反射して幻想的な世界を造りだしている。 まるで映画のワンシーンみたい。 わたしはそんなことを考えながら、ただ呆然とその様子を眺めていた。 やがて扉が開き、純白のウェディングドレスに身を包んだ花嫁が入場してきた。 色白でほっそりとした綺麗な人。 そっか。健太郎は彼女を選んだんだ。 美人でわたしよりも随分若いみたい。 やっぱりねって。誰にも気付かれないように小さく溜め息を吐く。 わたしは健太郎より四歳も年上だったから。
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