第1章

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   健太郎は会社の後輩だ。 わたしが所属する営業三課に彼が配属されて、その教育係を担当したのがわたしだった。 健太郎の第一印象は、すっきりとした顔立ちの好青年。 最初から年下だと感じさせない落ち着いた雰囲気に、指導するわたしの方が緊張したことを今でも覚えている。 そんな健太郎と恋に堕ちたのは自然の流れだったように思う。 当時わたしには遠距離中の彼氏がいたけれど、遠距離も一年が過ぎると心の距離も次第に離れていくのを感じていた。 お互い別れを言い出せなくて、惰性で付き合っていたのかもしれない。 合コンで知り合った彼と付き合って三年。 何もなければ、結婚の話がでていたっておかしくない。 正直、彼が転勤しなければ、そのまま結婚するのだろうと思っていた。 ある日、彼から他に好きな人が出来たと打ち明けられた。 薄々気付いていたけれど、それが現実になってしまうと、やっぱり悲しくて涙が零れた。
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