第9章

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   ジューンブライドはわたしの憧れだった。 梅雨入り間もない当日は、願っても無い晴天だった。 雲ひとつ無い青空を見上げると、その眩しさに手をかざす。 なんだか、すべてが夢のようだ。 健太郎の幸せを見届けたあの日から、わたしの幸せへのレールは敷かれていたのかもしれない。 きっと、幸せは連鎖する。 「祥子、凄く綺麗だよ」 「もう、そればっかり」 隣でわたしを見詰める新井くんに微笑みかける。 わたし達の左手の薬指には、結婚指輪が光っている。 わたしの両手にはカサブランカと淡いピンクのバラのブーケ。 これから、次の幸せに繋げるブーケトスだ。 「準備はいい?」 「うん」 「じゃ、いくよ。3・2・1」 新井くんの合図で、わたしは手に持っていたブーケを空高く投げ入れた。 歓声の中、白いブーケが弧を描いて舞い落ちる。 しっかり捕まえて。 次は、あなたが幸せになる番だから。 【END】
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