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「お邪魔します」
「どうぞ。汚いですけど」
健太郎はそう言ったけれど、わたしの部屋よりも片付いていて驚いた。
「綺麗にしてるんだね」
「物をゴチャゴチャ置くのが嫌なだけですよ」
適当に座ってくださいと、健太郎は笑った。
ねぇ健太郎。その夜、わたしに言ったこと覚えてる?
健太郎は「結婚を前提に付き合ってください」と言ったんだよ?
「四歳年上の会社の先輩に中途半端な気持ちで告白なんてしません」
そんなセリフを囁かれたら、健太郎に気持ちが向きかけていたわたしには、もう断る理由は見付からなかった。
だから、「でも結婚は一年だけ待ってください」そう付け加えられたセリフにも当然だと頷いた。
幸せだった。最初の一年は。
一年が過ぎると、何も言ってくれない健太郎に、本当にわたしとの結婚を考えているの?と不安になった。
少しずつギクシャクしていって。そのうちケンカをするようになった。
そして、健太郎に嫌われるのが怖かったわたしは、次第に言いたいことも言えなくなっていった。
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