第3章

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   新井くんは、遠まわしにデートのお誘いを断っているけれど、彼女はなかなか引き下がらないみたいだ。 それにイラついたのか、新井くんの表情がだんだん険しくなっていく。 「いえ、週末は用事があるんですよ」 ちょっと強めの口調でそう言った新井くんは、ふとわたしの方に視線を向けた。 「……ぅ!!」 油断していた所為で、バチリと目が合ってしまった。 イヤイヤ、気にしてたわけじゃないからね。 新井くんが小松さんとどうなろうとわたしには関係ないし。 週末だって、小松さんと約束しても構わないから。 そう思っていたのに。 「ええ。はい。機会がありましたら是非」 徐に受話器を置いた新井くんは、わたしを見てクスッと笑った。 それがまるで「約束はちゃんと守りますよ」と言われているみたいで。 わたしは高鳴る鼓動に気付かないフリをして、逃げるように席を立った。
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