最終章

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ロイが晴明を制止する前に、晴明の姿はもうそこに無かった。弾薬補充、都市専用武装へと換装を転用、燃料から機体負荷により汚水化したエーテル水の入れ替え補充、かくも次なる出撃に向けて準備は万端でいつでも出れる状態に仕上がっていた。 「直ぐに出る。護提督の艦隊の合流と熊本市内の避難民の救助、最優先で避難民救助に当り、護提督の艦隊には後ほど合流する」 私は早口で、自機の整備担当している整備士に概要を説明する。しかし、整備士は困惑した表情で上に掛け合うと言って、応対に困っている。時間がない、敵中にいるならば直ぐにでも行かなければ。 「ガーベラ、すみません。我々も直ぐに出撃させたいのですが、許可がおりません」 「あなたも分かるなら……ここは、我慢して下さい。ここにいる全員、みな」 晴明は殺気だった目を向けて整備班たちにこう言った 「行かせろ、でなければ……チェルミナートル………出るぞ!」 無人の機体が動き出し、整備班たちや他のパイロット達が逃げ惑う中、チェルミナートルが歩き出し、晴明を向かえるようにハッチを開けた。 「ダメですガーベラ!命令違反は、軍法会議に!ガーベラ!!」 彼の姿はハッチの中にあり、機体はホバリングしながら少しずつ上昇。 「人の命、救えなくて。何が戦闘機乗りだ」 エーテル反応を発現し、空母から熊本市内へ向けて突風が吹くように光りが尾を引いて離脱した。 一方、空母では 「晴明は!」とロイが周りに問うと、すでに離脱したと報告を受けた。しかし、ロイは 「ダム!まんまとシナリオに乗せられやがって、お前ら晴明を追うぞ!あいつを、世界に[飛ばされる]前に、草間!お前達は護提督の艦隊に行き援護しろ、いいな!」 「サー!」 「皆さんダメですよ、命令違反は!」 そこで艦内放送がなった 『全乗組員に次ぐ、熊本へ、取り残された命と船乗りの同胞達を救いに行くぞ。命救えなくて、何が船乗りだ!』 その放送をバイパーの機体の中で聴いていた八雲は 「ったく。理解のある艦長で助かったわ。晴明を救いに行くわよ。真琴、準備なさい。出るわよ」 「アイマム」 バイパーとファントムの二機は、各艦載機達と共に熊本へと飛び立った。
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