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俺は中小企業に勤める、ごく一般的なサラリーマン。
人付き合いの苦手な俺は、社内での人付き合いを避けるために昼休み等の空いた時間は外食する事で時間を潰していた。
そんなある日────────────────
「今日に限って満席…だと?」
行きつけの店が満席になっていて入る事ができなかった。
そういえば最近ネットのつぶやきでも店の話を見かける様になったっけ…と、なんとなく納得した。
仕方なく近くのコンビニで適当な昼食を買い、早足で会社に戻ると、社内食堂などを通りすぎエレベーターで最上階へ向かう。
最上階についた俺は、周囲を見回し誰もいない事を確認すると、屋上へ向かう階段を登り最上段に腰を掛けた。
「ふぅ…俺も難儀な性格だよな…」
コンビニ弁当をつつきながら携帯電話でタイムラインを眺める。
あー、やっぱ一人がらくだわー、他人に気を使わなくて良いのが一番!ボッチサイコー!
ドガンッ!
突然、背を預けていた扉に衝撃が走り、弁当を階段にぶちまけてしまう。
「ゲホッゲホッ!な、なんだ?」
俺は恐る恐る扉の鍵穴を覗き込んで見る。
そこにいた人物は、この会社で一番の美人と噂される『櫻子さん』が立っていた。
櫻子さんは、容姿端麗、頭脳明晰、スポーツ万能の完璧超人。
しかし本人はそんな事を鼻に掛けない謙虚さを持ち、同性・異性から好意を持たれるみんなの人気者。
仕事もでき、友人も多く居て、その上顔も良い。
全てにおいて平凡普通な俺とは正反対の生きる世界が違うリア充だ。
『恋人の相談とかしるかってぇーの!』
ドガン!
恐らくこの衝撃は、彼女の鬱憤を扉が受け止めている音なのだろう。
『こっちはさっさと帰って一杯やって寝たいっつーの!どいつもこいつも人の予定めちゃくちゃにしやがって!』
ドガン!
普段の彼女からは想像できない様な、暴言と行為に一瞬戸惑ったが…。
「リア充はリア充なりに苦労してるんだろうな…」
と、俺はぶちまけてしまった弁当を片付け始めた。
ガチャ
おいおい、そりゃそうだよな、出入り口ここだけだもんな、覗いてないでさっさと片付けて離れるべきだったわ。
「っ!?」
鳩が豆鉄砲を食らった様な顔で、櫻子さんは俺の顔を見ると呆然と立ち尽くす。
やっぱ美人だな…可愛さもある。
内心そんな事を考えながら弁当片付けを黙々とこなす。
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