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「なんかさ、誰にも嫌われない様に…って奮闘しながら仕事してると、ストレスだけ溜まっちゃって」
あぁ、それで昨日しこたまドア蹴ってたのか…。
「人間っすからね、そういうもんじゃ無いっすか?」
適当に返事をしながら俺は弁当を掻き込む。
「…アンタ変わってるよね。私の本性見た人って、それをネタに言い寄ってきたり、言いふらしたりとかばっかりだったから驚いちゃった」
そんなちょくちょく見られてんのかよ、結構抜けてんのか?
「はぁ、まぁ、自称ボッチでコミュ障っすからね。話す相手もいなきゃ、言い寄る度胸も無いっすよ」
弁当の残骸やゴミをコンビニ袋に入れて縛りながら、俺は櫻子さんに答えた。
「あはははは、そこまで自分を卑下する人も見た事無いわ!」
凄く嬉しそうに笑う櫻子さんの表情は、何時もの才色兼備では無く普通の女の子の様に可愛らしい笑みだった。
「そんなに面白いっすかね、自分」
「あ、ごめん。そういうつもりじゃなかった!こうやって素で話すのが凄く久しぶりで、楽しくてつい…」
「楽しい…っすか。自分もそんな事言われたの初めてっすね」
ニコニコと普段見せない彼女の一面に少しドキドキし始めていた。
「ねぇ、アンタ。今日暇なら仕事上がりに飲みに行かない?」
「自分と飲んでも楽しく無いっすよ?多分」
俺は首を傾げながら答える。
「良いのよ、話聞いてくれるだけで。それじゃ終わったらここに集合ね!」
そう言うと櫻子さんは階段を駆け下りて行った。
「…まじか…」
俺も自覚するほど変わっていると思うが、櫻子さんはさらに変わってんな。
こうして、ボッチでコミュ障な俺と、才色兼備の仮面を被った櫻子さんとの物語が始まったのであった。
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