第1章

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「そうですね、まず位置を特定しました。人員と配置予測です」  地上、最上部、ここの住人でも近寄らない危険な場所であった。主に犯罪者でも、極悪犯の潜伏が多い。  道は限られていて、そこには見張りが居る。見張りに見つかれば、人質が移動される可能性も高い。 「これは、仲間を助けに来たを、主張して通るべし」  正義などと言ったら、殺される。 「俺のテロ時代の仲間も、補助してくれています。ここの極悪犯に恨みがあるそうでね」  細い通路を抜け、上へと向かうしかない。その両側、地下、頭上も敵に近い。 「警官は、どこが襲われる?」  黒崎は、ある程度まとまった人数で手薄な警備として、交番を指摘していた。腐敗警官と言っていたが、そこも、賄賂天国ではあった。  交番が襲われると、宝来経由で警察に連絡を入れる。 「さて。行くか」  見張りはどこを見ている。政宗は、背にリュックを背負うと、気球を飛ばし、空中に足場を用意する。ビルを駆け上がり、足場まで飛ぶと、一気に最上部へ飛び降りていた。  頭上で移動する間は、黒崎の仲間が地上で陽動し、見張りの目を地上へ向けていた。  建物の最上部に降りると、ビルの内部を透視する。中間地点に幾人か、牢のような空間に閉じ込められていた。 「閉じ込められているのは、五人。他に…」  ベッドの上に、二人。  人数を分散し、牢に政宗と黒崎、極悪犯の居るベッドに兵士と茶屋町が向かった。  ビルの中間地点の牢に向かうと、見張りは誰も居なかった。牢の鍵を開け、ドアを開けると中には人が倒れていた。  皆、全裸で傷だらけであった。しかも、これは、幾人もに抱かれていた。 「しっかりしろ」  政宗が起こすと、若い男が泣いていた。 「こんな…こんな…」  何が言いたいのか分からないが、ショック状態であった。そして、若い男の尻に、残酷なようだが、宝来の文字で初と書いてあった。仲間の文字なので、意味は本人も分かっていないだろう。 「宝来…バカ者」  初物と言いたかったのか。宝来にこの、趣味の悪い癖を止めさせたい。育ちの良さそうな青年は、この仕打ちから立ち直れるだろうか。  政宗は、周囲の見張りを確認する。やはり、見張りはいなかった。  何故見張りが居ないのか。地上には幾人もの男が居た。地上から逃げると想定しているので、ビルの中には見張りがいない。
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