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「この飴、体温を下げる。熱い夜があるだろう。そんな時、この飴を舐めながら抱き合うと、何よりも涼しい」
ショーキッドに子供が多いのは、この飴のせいだという。
「…子供に言えない飴だな」
子供は単に、涼むために舐めるらしい。
「それに美味しい。買い込んでおいた、持ってゆけ」
何もトラックで来なくてもいい。代わりに、倉庫の食材を持ってゆかれてしまった。
「好意なのでしょう」
どう見ても、食べきれる食料ではなかった。茶屋町は、帰りの三人分のみ保存庫に残しているという。
他に政宗のお気に入りは、サボテンの水であった。ほんのり甘いが、水である。
帰るという前日に、宝来が砂漠仕様の車でやってきた。最後に、ショーキッドの街を見て行けと言う。
「どこから見るつもりだ?」
車は砂漠に来ていた。
「丘からだよ」
地下の女性は、半数が死亡してしまったという。半数は頑張って、生き抜いている。
夕日が落ちると、ドームの街が明るく浮かんでみえた。何かのおもちゃのようであった。あの街で、人々が生きている。
「ここで、生きたかったのかな、俺達…」
「どうかな」
車の上で、胡坐をかいて座る。二人並んで、浮かぶ街を見ていた。
「彼女達の不幸は、俺に会ったことだよな」
星空も大きい。
「まあ、そうね」
宝来の見た目に騙され、中身を見なかった事が原因であろう。
「さてと、政宗」
宝来が車の上に立ち上がると、政宗を抱き上げ地面に降りた。
「この丘が、月の石」
電気刺激で、丘がほのかに明るい。
「暫し会えないだろう。させて欲しい」
「野外で?地面で?」
何度も宝来が頷く。
「ショーキッドで、も、追加」
ほのかに明るい丘から、ドームの街。大きな星空。
「きれいだな」
宝来が見つめるのは、政宗だけであった。
裸で愛し合う、互い以外は無い瞬間。いや、互いというものが、何よりも分かる瞬間。
「熱い時は、飴だってよ」
「いや、熱くはないよ」
どことなく色気はないが、互いに見つめ合いながら、小さくキスを繰り返す。
「ここのサボテン。役に立つよな」
潤滑剤もサボテンであった。
「殺菌作用もあって、粘りも最高」
潤滑材を、宝来がどのように購入したのか、政宗は突っ込みたいが、全身に塗られてしまっていた。
「乾燥も防ぐから、肌に塗っておくといいらしいよ。女性が美容にも使用している。虎森丸に積んでおいたよ」
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