第1章

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 いつの間に、そんな事をしていたのだ。 「では、マッサージにしましょうか」  政宗は起き上がると、サボテンの潤滑材を宝来の背にかけた。手を滑らせて、背を揉み解す。 「これは、いいね」  案外、歓楽街にもこのマッサージはいいかもしれない。サボテンマッサージ。  背を肩を滑りながら、政宗がマッサージしていた。全身を使い、全身を揉み解す。 「チェンジするか」  しかし、宝来のマッサージは局部的であった。 「食べても無害だからな…」  食べても?どこから、食べさせているのだ。政宗の中に、直接、冷たいものが入ってきていた。しかも、ぬるぬるしていて、気持ち悪い。 「宝来」  抗議してみたが、宝来は気にもしていなかった。 「サボテンも夜光るのだな、すごく、きれいだ。朝露みたいに、政宗の全身が光っている」  誰のせいだと言いたいが、同じように宝来も光っていた。色気とともに、つい政宗も宝来に見惚れる。こんな男が世の中に居るのだ。漆黒の瞳、黒い髪、整った顔、均整の採れた体躯、最上級の男。 「あん…ん…」  濡らされているせいなのか、いつもよりもきつくなかった。  宝来の膝の上で、繋がったまま、可笑しくなってしまっていた。いつも、普通でいいと言いつつも、こうやってあれこれされることも楽しい。 「宝来、今度はオウランドのユカラの天辺でするか?」 「酸素あるかな…」  既に宝来の頭の中では、方法を編み出しているのだろう。 「さてと、しますか」  政宗が動き、宝来も動く。飛び散る汗が、光っていた。美化ではなく、サボテンの潤滑剤が飛び散るのだ。 「ぁ…んん、あっぁ…」  誰も居ないので、激しい嬌声が上がる。その声が風に流されてゆく。  「ん?」  風? 「ん、んん?」  風が強くなってきた。これは、砂塵注意報がかかる。 「続きは車の中だな」  車に移動すると、同時に砂塵注意報が出ていた。 「最後に、砂塵が見られて良かったよ」  なつかしい砂の中、また宝来と抱き合う。砂塵が去ったら、車を掘り起こさなくてはならない。天井に出入り口があるが、車は砂に埋まり易い。  窓の外が、砂だけになってくる。しかし、車を揺らすのは、別のコトであった。 「あ、あ」  シートに寝かされた政宗の上には、宝来が居る。激しい揺れが、再び止まった。 「砂塵が終わったな…」  体力を残しておかないと、これからが辛い。 「掘り起しますか」
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