第1章

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 政宗の手は、上原の頭を撫ぜていた。いつまでも、幾つになっても兄貴は、兄貴であった。 「死なせるものか」  ショーキッドまでの距離を見ると、かなり近くなっていた。  もしかすると、と、政宗は起き上がる。山猫をショーキッドに置いてきていた。山猫は、街ではなく隔離施設に居た筈。ヒカリから通信してみたが、音信不通であった。  ライオン、諦めながらも試してみると、僅かに映像が見えた。 「私たちは生きています。ドームは政府施設と住居が燃えました。貧困街は無事ですが、通信設備はありません」  誰かが、ライオンに向かって話しかけていた。ショーキッドは全員が死んだわけではない。  政宗はライオンの映像を、そのまま宇宙政府に流してみた。 「誰も救助がきません。医療物資がありません、怪我人がいます。食料もありません。助けてください」  宇宙政府から、救助隊が派遣されると返答があった。  更に近付くと、山猫とも通信できるようになってきた。山猫の方が、通信性能が劣っていたので、音信不通であったのだ。  そこには、黒く染まったドームが映る。ドームの中が、全て燃えてしまっていた。完全に燃え、人は灰になってしまった。  あの日の事故と同じであったが、今回は爆心地があった。キリトのビルであった。 「自殺ではありませんよ、報復でしょう。でも運悪く、ドーム全員が犠牲になった」  黒崎が、状況を説明してくれた。  まず、ドームが閉鎖されていたということ。キリトのビルが報復で爆破される、ドーム内に粉塵が飛び、ささいな着火で次の爆発が起きた。  ドームの閉鎖は砂塵であろう。割れたドームに風が吹き、中を竜巻のように走り回る。外にも内にも逃げ場が無かった。  本当に、当時の事故とも似ていた。ショーキッドは、恒久的な対策はしていなかったのだろう。  でも、また繰り返され、今度は大切な人を失っていた。昔逃げた時は、二人であった。二人でならば、どこででも生きていけると思った。  一人は辛すぎる。これは罰なのだろうか。罪には罰であったのか、逃げた罪ならば、政宗も同等であっただろう。ならば、政宗も一緒に殺して欲しかった。  ショーキッドへの着陸許可を取ると、虎森丸は砂漠に降りた。砂漠でも着陸可能であることが、着陸許可が出た理由であった。  中から車を出すと、現場へと向かっていた。
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