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現場は、やっと救護も到着していたが、まだ瓦礫の山になっていた。そこに街があったことなど、まるで分からない。
時宗が、瓦礫を見て泣いていた。それを不思議そうに、政宗が見ていた。
「父ちゃん、どうしたの?父ちゃん」
にっこり笑う政宗に、泣きながら時宗がしがみついていた。
「政宗?」
茶屋町も不安な表情を浮かべた。
政宗が何か言い掛けたが、声は出ていなかった。
第九章 さよならよりもありがとう
ほんのり政宗に浮かぶ笑顔に、時宗は不安を憶えしがみつく。
「政宗?」
茶屋町も、政宗を見つめ続けていた。
瓦礫の中に生存者は居なかった。しかし、逃げたという幾人もの住民が、次々、貧困街から出てきていた。怪我人は他の星に運ばれたので、全員死亡ではなかったらしい。
そこで、政宗は炊き出しを始めていた。温かい食べ物を提供する。弱っていた政宗が、料理を始めたのはいいが、周囲がとまどっていた。
『政宗さん、どうしたっすか?』
政宗がにっこり笑う。ミチルもエイタも、その笑顔に固まっていた。
「政宗さん、しっかりしてください!」
必死にエイタも、政宗に縋っていた。
時宗も号泣して、茶屋町が宥めていた。
『黒崎』
政宗は手話で黒崎を呼んでしまってから、己の状況を理解した。
政宗は、いつも説明が足りていない。今回も政宗は、周囲が分かっていると、勝手に解釈してしまっていた。
「あのな…」
掠れた声が、政宗から発せられていた。泣いていた時宗に静かになった。ミチルもエイタも動きを止めて、政宗を見た。
「ここに、宇宙船の残骸はあるか?」
災害現場で喜んで悪かったと前置きしてから、小さな掠れた声が続いた。
「宝来、出て来い!」
救助の人々に混じり、軍人が幾人も居た。
その中から、掠れた政宗の声を聞き分けた人物が居た。集団から浮かび上がると、それは確固たる存在になった。
「全員でここに来たのか?砂漠から発進しようとしていた時に、この事故でな。そのまま救助していた」
宝来が立っていた。
宝来は、砂まみれであったが、いつもの宝来で傲慢な笑顔で、豪華な姿であった。
「ああああんん」
時宗が大声で泣き、真誓も併せて泣き出した。ミチルも泣きだし、エイタも泣く。
「ごめん、時宗、真誓、それから、そっちの二人も、泣くな…」
どれだけの思いで泣いているのか、宝来は重々承知していた。宝来の眼差しは優しい。
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