第1章

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 最後に、政宗が涙を落とした。右目だけならば、涙も出る。 「政宗、心配かけたな…」  宝来の手が、そっと政宗の右目に触れる。涙は温かい。宝来は砂まみれの手を、自分の服で拭うと、再び政宗の右目に触れ涙に触れた。 「宝来、生きていてくれて、ありがとう」  宝来が、時宗と真誓を抱えて、政宗も抱き込む。 「通信設備もなくて。宇宙船からでも、オウランドまでは無理であったな。それどころか、通信可能な星もなかったし」  地元の救助の船は砂漠に着陸できず、軍部との通信も不能であった。  政宗から、次々と涙が流れて落ちていた。 「なあ、宝来。オウランドの家に戻ろう。そこで暮らそう」 「分かっているよ」  もうショーキッドは嫌であった。何度も、何もかも失う悪夢を見る。  それから一か月後。  オウランドでは、からくり屋がユカラの依頼を受けていた。  時宗も、真誓までも、ユカラの依頼を受けるようになった。  宝来の宇宙船は、王ランドを拠点とするようになり、帰って来ては、派手に政宗と喧嘩する。  茶屋町は、夫婦喧嘩は犬も食わないと傍観している。 「政宗、愛しているよ」 「知っている」  再び喧嘩が始まる。 『Naked Moon』 終
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