第1章

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 茶屋町が車でやってくると、政宗は料理を始めた。そこで、黒崎は人の会話から、人質の情報をシミュレーションする。  パスタを売り始めると、遠巻きに見ていた連中が、何かを思い出して寄ってきていた。 「あんた、もしかして宝来の相棒なのか」  政宗は昔も、こうやってパスタを売っていた。安価で量が多く、何よりもおいしい。 「政宗ですよ」  ああそうかと、奥から人々がやってきては、パスタの皿を購入していた。 「宝来の愛人たちが、皆、キリトに捕まってね。俺も危険だけど、人探しですよ」  正直に話すと、あちこちからひそひそと話す声が聞こえた。  警察がやってくると、店は茶屋町が仕切り、政宗は路地へと隠れる。警察に追われていることで、政宗の信憑性が高まっていた。 「キリトはここで狩りをさせる。俺達は、皆、楯突くと殺される」  そう言いながらも、人質の情報が集まっていた。その情報を、そのまま宝来に流す。  宝来は、警察を助ける気は全く無い。人質だけを助けると、軍部に搬送していた。  その状況で二十人が過ぎた時、流石に警察が異常に気がついた。殉死が多すぎる、宝来や政宗の周辺を見張っていたが、怪しい動きはない。殺される警官は、様々な場所に点在していた。 「指名手配の取り下げで、警官を助けてもいいという条件を出してみた」  宝来から連絡が来ると、暫くして指名手配の取り下げがあった。誤りであったと、正式に公表していた。  残り二十人ほど。これから情報が少なかった。キリトの近辺の人間が、隠しているのかもしれない。 「黒崎、人質はどこに居るかな」 「おおよそは分かりましたが、戦闘なしは不可能な場所ばかり」  パスタ屋をしているわけにはいかないか…政宗がパスタ屋を片付けようとした時、宝来の宇宙船で、政宗を付けていた連中が来ていた。 「パスタをお願いします。これが報酬はいいので、手伝いましょう」  あれから天然体を怖がらせたのかと、深く反省したのだそうだ。 「俺達が天然体に寄せる思いは、本気で純粋ですよ。しかも、命懸けというのを、知って欲しいです…」  天然体を初めて見たので、怪しい行動をしてしまったのだそうだ。 「それに、誘拐されたのは仲間ですから」  仲間が、宝来に手を出されていた事も、承知していた。助かった仲間が、理由を言っていたのだ。 「黒崎、指示を頼む。ここは、黒崎の方が詳しいだろう」
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