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五人とも、似たような状態であった。しかし、一人の様子がおかしい。全裸ではあるが、傷はない。
「隣の部屋に服があった」
「動ける者から移動する。すぐに仲間が合流するので、地上へ向かう」
怪我の無い一人と、兵士を地上へ向かわせる。
完全に地上へ行った事を見計らい、他のメンバーは屋上へ上げた。
「飛べ。回収する」
政宗のリュックにはバルーンが詰められていた。バルーンを膨らませると、一人ずつ空へと飛ばす。
四人、完全に飛んだ事を確認すると、地上の様子を伺う。地上は陽動で行かせたのだ。一人は、スパイであろう。
茶屋町が、ベッドの二人を連れて屋上にやってきた。この二人も、バルーンで飛ばす。
「さてと、ここ男だけだったね」
残りの人質は、全て女性であった。
「残るは地下ですか…」
その前にと、政宗は地上へ飛び降りていた。追って茶屋町も飛び降りる。
「何者だ?」
屈強な男が寄ってくる。腕に覚えがある者には、ミラレスが多い。
「聞きたいことがある」
人質もなく、丸腰の天然体に政宗は見える。捕まえれば大金になるが、男たちには捕まえる様子はなかった。
「テロリストだった少年か…何か用か?」
「どうして、キリトのいう事を聞いた?」
ここでは、脅しではなかっただろう。
「金だよ。それに、協力はしていない。ここに人質を置いてゆく。好きにしていい、だけだ。それに駄賃だと金をくれた」
ミラレスの犯罪者たちは、政宗と同じように虐げられていたので、反抗してしまったという者が多かった。ビルの中で楽しんでいたのは、ミラレスとは異なる凶悪犯罪者で、ここには警官が来ないが、娯楽がないので鬱憤を晴らしていたのだそうだ。
「ここ、殺人犯が多くて、殺すつもりで楽しんでいるのだろうな…」
天然体だと、政宗は幾人もに腕や背を触られていた。茶屋町が、渋い顔で見守っている。
政宗は救護班に連絡を取ると、彼らの内部に残されたDNAを採取し、国際手配と照合するように頼んだ。
「軍部は多少の犯罪者は気にしない。これからは、働かないか?」
ショーキッドでは、ショーキッドをよく知っている兵士が必要であろう。
「まあ、考えておくよ。それより、キリト相手だろう。人質救出は、これから地下か?」
「そうなる」
地下は、地下の世界があるので、政宗には無理だと彼らは言った。
第七章 路地裏の少年
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