第1章

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 政宗の住んでいた頃は、地下など無かった。地下は、砂の影響が少なく、犯罪者ではないが、連携が強くよそ者を排除する。 「まず、よそ者が入ったら、迷路のような通路に追われて出てこられなくなる。土地の者が入っても、案内が無ければ、全く分からない」  迷路ならば、設計図でどうにかなる。 「言っておくが、彼らは、自分達で通路を足し、住居を足した。地図はどこにも無い」  政宗の左目には、今は透視能力を入れておいた。地面を透かすと、確かに複雑に入り組んでいた。落とし穴も複数ある。敵の侵入を防ぐのだろう。 「他に、病原菌が多くて、きれいな世界から来た者は、免疫がなく生きて出られない」  貧困街でも地下は特別で、地下から来た人間は匂いで分かるのだそうだ。その匂いがすると、病気が感染すると皆逃げた。実際、子供は幾人も近寄り死んでしまったという。  何かの感染症が、地下には蔓延しているようだった。 「地下で死んだ人間を見つけ、病原菌と感染症を特定して欲しい」  宝来の部下の南方に頼んでみると、宝来が既に手配していた。加賀医師が同船していて、今、嬉々として病気の塊と化していた死体の分析をしているらしい。 「黒崎、地下の協力者は探せるかな?」 「地下に協力者は無理でしょう。でも、全員、地下から出してしまいましょう。貧困街でも差別化してきた。この差別が決定的になる前に、地下の全ての人間を消毒、除菌してみましょう」  酷い言い方だが、このままでは地下の人々全員が死亡するという。 「煙幕を地下に落としてゆきます。出てきた人間は、全て一か所に集め、全身を消毒後、風呂に入れ、健康診断させます」  その場所と、人員をどうするのか。 「手配していますよ」  茶屋町が手配し、ショーキッドに常駐する部隊が引き受けるという。  残り時間は、五時間であった。残っている人数は、十二人。地下で全員が見つかるのかが、心配であった。 「煙幕、投下します」  煙から逃げるように、人が地下から出ていていた。そこには、子供も多く、老人も多かった。 「防護服あるか」  防護服で地下に入ろうとする政宗を、茶屋町が止めていた。 「いや、これ防護服では無理ですね。細菌も見つかっています」  では、どのように人質を見つけるのか。 「どうやって救助する…機械なら細菌は関係ないな」
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