第1章

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 政宗は、宇宙船に乗せていた、山猫型の機械を思い出した。山猫には、映像送信の機能も付けていた。 「宇宙船から山猫、持ってくる」 「俺が行ってきます。黒崎、政宗を頼む」  黒崎が、政宗の後ろに立っていた。黒崎は端末を政宗に見せると、内部のシミュレーションを行っていた。女性は分散され、閉じ込められていると予想された。 「救護を呼んでおくといいでしょう。それと、そのまま搬送すると、搬送車からの感染の確率が高い。キリトは焦らせて、感染を拡散させようとしてきます」  隔離する車が必要であった。 「宝来、砂漠用に改造した運搬車。空気感染に耐えられるか?」  宝来が、合流してきた。 「耐えられない。無人で運転可能にしてある。予測される感染の、抗生物質も積み込んだ。砂漠へ運搬する。自分達で自分の治療を施して貰う」  生きる為に、自分で治療しろという。画像での通信も可能にしてあり、やり方や質問は受付する。 「山猫、持ってきました」  地下へと山猫を落としてゆく。山猫を操作し、該当の場所へと誘導する。 「こんな場所に、人が住んでいたのか…」  地下の映像は、まるで、アリの巣を覗いているようであった。暗い中に、人が掘ったと思われる穴が開き、その中に布団や食料が置いてあった。 「一体発見!」  下着で、うずくまっている女性が居た。衰弱が激しく、自分で動ける感じではない。 「どうして衰弱している」  山猫の映像が荒い。皮膚の色が分からないが、ライトに照らされた顔は、明らかに黒い。 「感染だろう…」  山猫で運び出せるのか。一体では無理なので、数体の山猫を集め、外へと運搬を始めた。 「一体の運搬で一時間かかりそうだ」  二体目を見つけたが、同じように、何かに感染していた。山猫が少なく、運搬できない。 「十二人か…茶屋町、ライオンも持ってきたな」 「はい」  ライオンも地下に入れてみた。これで、二体目を運ぶ。 「間に合わないな…」  このペースでは、全員助けることができない。 「茶屋町、山猫の操作を頼む。人工知能があるので、多少の無理が可能だ。山猫で、とにかく人質の映像が欲しい」  政宗は、リュックから小型の補助装置を取り出した。 「ヒカリ、補助を頼む」  政宗は、左目を取り出すと、機械に入れ替えコードを繋ぐ。
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