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政宗は胡坐をかいて地面に座ると、右目を閉じた。コードが、どこからともなく伸び、地下へと移動してゆく。山猫の映像を追い、人質へと辿りつく。
「流動鉄を動かす」
空中を移動してきた流動鉄が、地下へと入ってゆくと、人型になり女性を担ぎ歩きだした。
「政宗、あまり無理はしないでください」
政宗の左目から、血のような涙が落ちていた。
「ヒカリ、補助を頼む。流動鉄で、運び出して欲しい」
政宗は、今度は咳き込むと、右目を開いた。
「確かに、かなり無理があるな。けど、どうにかなりそう」
再び目を閉じると、次々、人質へと流動鉄を送り込んでいた。
「残り時間、二時間か…」
あと二体足りない。山猫が、人質を探し出せない。
「黒崎、人質は埋められているのか?」
「可能性としては、それが高いですね」
山猫に嗅覚は付けていなかった。無暗に壁を壊すと、天井まで崩れてくる。
「山猫、鳴け」
山猫の声で、二人の名前を呼び、壁を叩けと命令してみた。音ならば、山猫でも拾える。「どこだ…」
弱いノックの音が聞こえた。そこだと、山猫で壁を壊すと、中から、何かが出てきた。
「腐敗なのか?」
人間なのか?黒い塊が、穴から出てきた。
「一日で、ここまで腐敗するのか?」
しかも、生きている。地下の人間でも、あまりに臭かったので、蓋をしたのかもしれない。
腕を掴もうとすると、腕の皮膚から肉まで崩れて落ちた。女性の悲鳴が聞こえていた。
「流動鉄で箱を造り、運搬する」
流動鉄がキャスターの付いた箱になり、山猫が引いて運び出す。状況は緊迫しているのだが、どことなく、童話のワンシーンのようであった。猫が荷台を引いている。
「自己治療は無理ではないのか?」
しかし、感染症である以上、対策のある施設にしか運べない。
「山猫もライオンも、一緒に乗せろ。山猫に治療させる」
ライオンは何をするのだ。
「全員、収容した」
どこかで、バンザイのような騒ぎがあったが、政宗は宝来を凝視していた。軍部は、事態の収拾を始めていた。
政宗は、黙って立っている宝来を見つめる。
「全員ではないよな…何人、見殺しにするつもりだ?」
小声の政宗は、左目のコードを抜き取る。強く抜き過ぎたのか、左目から機械が外れ転がっていった。
「軍部は全員だ。他に、ここのエリート職員の子息が行方不明だ」
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