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宝来が手をつけた人間を攫え。軍部とは限定されていなかった。そこで、宝来はわざと、エリート職員、政治家の子息に手を出した。その数、六人。短い時間で、よくそこまで口説けたと、政宗も呆れる。
「警察が探している。軍部には依頼がきていない」
警察を巻き込み、エリート達をも、このゲームに巻き込んでいた。宝来も、キリトもショーキッドに対する恨みは大きい。でも、このゲームには、関係のない人間でもあるだろう。
「宝来……」
政宗は、視線を外すと、黒崎を見た。
「黒崎、あと六人はどこにいる?」
残り時間は、一時間を切った。
「六人は、キリトの元でしょう」
この一部始終を、キリトは間近で見ているという。
「キリトならば、多分、北の最上部の屋上付近だろうな」
キリトは砂漠の丘から、街を見るのが好きだった。その砂漠の丘は、今は貧困街の最上部になった。
「宝来。行かないと言ったら、離婚だからな」
見殺しにするような男ならば、政宗も切り捨てる。
「分かっている」
政宗がビルを駆け上がると、先ほどの空中の足場から最上階へと降りてゆく。続いて宝来が移動すると、銃でバルーンを落とし、足場を消した。
「時間ピッタリだね。助けた人数と、残した時間」
ビルの屋上で、キリトはイスに座り、シャンパンを飲んでいた。豪華な椅子に、テーブルも用意していた。キリトは片手に、双眼鏡も持っている。
「そうだね。キリト」
政宗は、両目を閉じていた。
片目だと動けなかったのだ。政宗がポケットを漁ったが、予備の左目が無かった。
両目を閉じていても、移動には問題がないが、やはり目を使用したい。
「ほら」
宝来が、ポケットから出した目を投げていた。
「サンキュー」
生体型の、昆虫型であった。目の色は合わせてあるが、強い機能が入っていた。暫し、政宗はくらくらと揺れていた。複眼、そして分別機能付き。後ろまで見えていた。
「宝来、もう少しマシなのを持っていろよ」
「それ、きれいだったからさ」
ややメタリックな色をしていた。
「とりあえず、再会に乾杯しよう」
グラスが用意されていた。グラスの横には、冷えたシャンパンがあった。
「毒は入れていないよ」
政宗の左目でも成分は分析できる。毒は確かに無かった。
「では、いただこう」
宝来がシャンパンを手に取る。政宗も、シャンパンを手に取った。
「再び会えた事に乾杯!」
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