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上質なシャンパンであった。
「この星は腐敗している。俺も、腐敗しているけどな。その中で、夢だったよ」
路地裏の細い道を抜けると、朽ちたビルがある。窓を見上げると、少年が二人、皿を手に持ちながら、何か話している。
ガキの頃は気付かなかったが、次第に見えてきていた。彼らは、上玉で誰もが欲しがるようになってきた。頭脳、度胸、運動能力、どれを取っても類を見ない優秀さであった。いつかは、貧困層を抜け、どこかに行ってしまうだろう。でも、その仲間であることが、誇りであった。
窓を見つめる事が、唯一の楽しみであった。
「俺の夢は、手に入れる事だったよ」
そう気付いたキリトは、何でもするようになっていた。殺しも、夢のためならば、苦痛ではなかった。
「手に入れるとかではないよ。俺達は、ここに居る。会いたければ、会いにくればいい。それだけだよ」
特殊ではない。
「そうだな。でも俺は、今は悪だよ。もうあの時間が無いように、俺も悪以外にはなれない」
どこで間違ってしまったのだろう。
「脳での、補助装置は禁止する。武器の所持は宇宙法をショーキッドに適用し、取り締まる。犯罪者の巣窟であることから、国際警察が常駐になる。ショーキッドは少しずつだけど変わってゆくよ」
劇的には変わらないが、少しずつならば変わってゆく。
キリトは微塵も動じず、ただ笑っていた。
「政宗、宝来をどう思っていた?」
唐突に聞かれて、政宗は宝来の顔を見た。
ふざけて聞いている様子ではない、多分、知りたいのだろう。
「孤児院でな、こいつ、何をしたと思う。孤児院を出る時、俺は別の奴と他の星に行くはずだった。宝来は自分の相手を殴り気絶させて、俺を騙して船に乗せた」
宝来は、知っていたのかと、そっぽを向いていた。
「全部知っていたけど、俺は宝来と生きたかった」
宝来のした事は、政宗は最初から知っていた。でも、黙って、ショーキッドに降りたのだ。
「幸せか?」
それは、修太郎も聞いていたかと思う。当時のショーキッドでも、よく聞かれたか。浮気ばかりの宝来で、幸せなのか。
「宝来と居ることに後悔なんてしたことがない。幸せは自分で掴む。俺の幸せを、宝来に全部あげる。幸せは宝来が喜べば、二倍になって返ってくる」
宝来が真っ赤になっていた。
「政宗…今の言葉は本当?」
「本当」
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