第1章

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 六人の人質は、全員死亡していた。それが大問題になっているらしい。政宗を連行しようとしたので、仕方なく、政宗は、軍部特別捜査室の室長のパスを出す。他に、国際警察からの委任状も出してみた。ユカラがぬかりなく、手回ししてくれていた。  ショーキッドの警察に、軍部の人間を逮捕、連行できる権限はない。 「失礼しました!」  警察が去ってゆき、もう一度眠ろうかとしたが、今度は修太郎が来ていた。自宅に招待したいという。 「昼からね」  そう言っても、修太郎は諦めずに政宗の手を引いていた。 「茶屋町、修太郎の自宅に行ってくる」 「俺も行きますよ」  修太郎の家は、かろうじて一般のドームの中に在った。小さな商店だが、倉庫は大きかった。そこに妻は、本当に二人居た。 「この方が、政宗さん?」  悲鳴があがる。 「想像していたよりも、ずっと美形。本当に人間なの?きれい。かわいい!」  かわいい?小さく見えるが、身長百八十はある。茶屋町も、宝来も政宗よりも高いので、低く見えるだけだった。 「こちらが、宝来さん?」  後ろに居た茶屋町が、慌てて首を振っていた。 「いや、俺は、茶屋町 一樹です。宝来は…」 「本田 宝来。宝来は俺です」  又、悲鳴が上がっていた。宝来も、修太郎の家に招待されていたらしい。 「何なの…!皆、役者さんみたい。かっこいい」  散々悲鳴を聞き、ランチを一緒にと誘われていた。でも、子供が小さく、なかなか料理に集中できないようであった。 「俺が料理しますよ」  食材から、料理の予想はできた。 「すいません」  真っ赤になって見つめられる。 「パパから、色々と話を聞いていて、想像していたけれど。実物は予想以上。これなら、パパの執着も分かる!」  従業員もやってきて、賑やかな食卓であった。  食事が終わると、倉庫の屋根の上で、三人でビールを飲んだ。茶屋町は、食事の片付けを手伝っていた。 「墓参りしましょう。政宗を助けようとして殺されたあいつの墓も移動しました。他に、身元不明者の遺体を周期的に確認して、殺された仲間も一緒に埋葬しました」  生きる事が戦いであった。残された者も、戦っていたのだ。 「そうか…寂しくなったな」  ふざけた記憶や、笑顔を思い出す。 「孤児の生存率は、元々低いでしょう」  何もなく、ここで過ごしていたら、どうなっていたのだろうか。考えるだけムダだが、つい考えてしまう。 「墓参りするよ…」
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