序章

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「では、拙者も行くでござるよ」 ゼノヴィスを見送ると、ツキカゲがそのような事を口にする…ツキカゲの故郷【倭国鬼倭】は、俺の住んでる【イーストグレン帝国】の北方に位置する竜王渓谷の先… 途中まで一緒だと思っていた、俺は思わず声をかける…。 「…は?此処じゃなくてもいいんじゃないのか?」 「いやはや、最初は真っ直ぐ国に帰るつもりでござったが、まだまだ拙者も未熟とわかった故に…」 「…そんなに強かったのか?あの死霊侍は?」 「死霊とは名ばかりの生きた剣でござった…死というのも悪くないと錯覚するぐらいの楽しさでござるよ」 「…次期領主が国に帰らないと、困るんじゃないのかよ?」 「拙者がいない程度で滅びる国なら、それまででござるよ、拙者は暴食…常に強者と喰らいあいたいのでござる」 …己の罪がままに…そう…俺たち七人に共通している事は『他人の指図を受けない』…ツキカゲはその典型的な奴だ… 俺がそんな事を考えていると、横にいたセレンがツキカゲに声をかける… 「竜さえも喰らう鬼には、今回の戦は不完全燃焼なのだろう?ツキカゲ、世界を回るという事は、私たちとも剣を交えるか?」 「無論、むしろそれが一番の理由でござる。拙者はセレンに負け越しているし、ゼノヴィスとは決着がついておらぬし、ローやリリスにミラージュとも喰らいあいたい…そして何より、ショウ…拙者はお主を超えてみたい」 「俺は7人の中で一番弱いぜ?」 「最強の弱者でござろう?拙者の恋焦がれる想い、刀で受け止めて欲しいでござるよ」 …時代の刀神からの告白…真っ直ぐな感情…まったく…辛いね… 「受け止めてやるよツキカゲ、イーストグレンのショウとしてじゃなくて、お前が恋した男としてな」 「楽しみにしてるでござる、赤子が産まれる頃には顔出すでござるよ」 最後にそうツキカゲは言うと、魔王城跡地の方に戻って行った… …世界を知り、刀の神は更に参加するために…
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