序章

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賑わう店の中とはうってわかり… 店のテラスで月明かりを眺めながら、綺麗な純白のロングヘアーに同じく純白の鎧を身にまとった女性と黒い袖無しロングコートの銀髪ツンツンヘアーの男が酒を呑んでいた…。 「まったく、明日が決戦と言うのにはしゃぎすぎだな…」 ワインを片手に溜め息まじりでそう呟く女性は、エルトロン法国が誇りし妖精族の女王騎士セレンティーヌ・Y・フォルカニア… 容姿端麗、才色兼備、文武両道、世界五大美女にも数えられる彼女と二人きりで飲める状況は並大抵の男なら嬉しさの余り発狂するものだが… 「カッカッカッ…相変わらず固いなセレンはよ~?こんぐらいの度胸のある奴等だからいんじゃねぇか?」 …この男には、どこ吹く風であろう…彼こそこの物語を紡ぐゆえでの憐れな子羊…名は、ショウ・ヤノツキ 齢18にして、帝国が絶対的に揺らがぬ象徴とされている【三帝】の一人であり、民から絶大なる人気がある男… 「…明日が決戦か…」 「ん?流石の貴様も恐怖しているのか?」 「ん?いやいや、逆逆…寂しくてしょうがねぇなってな?」 …ショウとは幼馴染みであるセレンティーヌはショウの言葉の裏に隠されている真意を理解はしているが… 「…私以外に、そんな汚い笑顔を見せるなよ」 「おっと、いけねぇ」 …感情的には理解はしたくない…ショウは争いを好まない、帝国でも彼がやっていたのは民への支援がほとんどだ、しかしそんな彼だからこそ望んでいる… 『絶対的な暴力同士の壊し合い』を… そんな表裏一体な彼に心を奪われたセレンティーヌだが、その想いは届かないことを彼女は理解している…。 「マリアは息災なのか?」 「まぁな、この戦争が終わって帝国に戻る頃には子供も産まれてる」 「ほぉ、お前みたいな悪餓鬼が人の親か、世も末だな」 「おう、だからよ俺みたいにはなってほしくねぇんだよな」 …月を見ながら酒を飲み干すショウのグラスに、酒を継ぎ足しながらセレンティーヌが口を開く…
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