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 お姉さんとの出会いの後、私はよく本を読むようになりました。お姉さんが教えてくれた本もいくつか読みました。色々なお話を読むたびに、私はますます読書に熱中するようになるのでした。本のことを敵のように思っていた私が、大学では英文科に進んでいるのですから、お姉さんとの出会いの影響は計り知れないというものです。  鈴のキーホルダーは今でも大切にしていて、お姉さんと同じように鞄に付けています。この鈴の音を聞くたびに、お姉さんとの出会いを思い出します。そして、あの虹を見たときに幼い私の心の内に起こった感動が呼び起こされるのです。  大学四年生の夏、私は久しぶりに実家に帰りました。ちょうど古本まつりが開催されているころで、私は四年ぶりに糺の森へと行くことにしました。お姉さんに会えるかもしれないという、ほんの微かな期待もありました。  家を出ようとしたとき、母親に傘を渡されました。通り雨に注意との予報が出ているとのことでした。空を見上げてみれば、西の空に鉛色した雲が浮かんでいました。  あの日と同じように鴨川のほとりを歩きます。一歩ごとに、鞄に付いた鈴が「ちりん、ちりん、ちりん」と鳴ります。「通り雨が降ったら、あの日と同じような虹が見えるだろうか」なんていうことを考えました。「空にかかる虹を見ると、私の心は高鳴るのです。少年のころも、大人になった今でも、そうなのです。年をとっても、そうありたい。さもなくば、死を」と、あの詩を日本語にして口ずさんでみました。
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